理科に強い教師を育てます。
「理科に強い先生を育成すれば、理科好きな子どもが増える」という理念のもと、理科の指導力の高い教師を養成するために平成27年度に開設された理科教師塾。「実感」「体得」「会得」の三つの側面を育成することを「理科教師塾」の基本方針に掲げ、大学の理科室で理科を学ぶのはもちろん、年間を通して近隣の小学校やサイエンス教室で指導力を磨いています。
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自然の事物現象に興味関心が持てるよう、出来得る限り実物を使い、本物に触れながら、自らの諸感覚を働かせ、観察、実験等の具体的な体験を通して探究を進め、実感を伴って理解することを大切にしています。
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理科で扱う教材は、物理、化学、生物、地学の広範囲に渡り、分野や教材内容によって対象へのアプローチの方法は様々です。扱う対象によって異なるアプローチの方法を体で覚えることができるようとことん実践します。
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同じ志をもつ仲間と共に、実験や教材提示の意味を考え、予備実験やワークシートの作成、板書計画、細案作成の後、模擬授業を行います。そして、授業を評価、検討することによって、小学校の理科授業の導入、展開、まとめのプロセスを自分のものにすることができます。
理科教師塾の学び
予備実験・教材研究
観察や実験を伴う理科の授業は、予備実験や教材研究を行ってから授業を設計します。教師が想定した結果が得られるか、使用する器具が適切かなど実験のコツを掴んだり、安全面の配慮事項を検討するためにも予備実験、教材研究は必要です。
理科教師塾では、先輩後輩の関係を超えて、ひたすら予備実験や教材研究を行い、児童の見方考え方を予想して、それぞれが自分の意見や考えを出し合っています。自分たちが納得できるまで何度も試しながら実験方法を考えることが指導力につながると考えています。
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授業設計を考える
学習指導要領、学習指導要領のの解説を確認しながら、授業のねらいを明確にして授業計画を立てます。児童の興味関心を高めるにはどのように観察・実験を進めるとよいか、また学習課題の設定はどのようにするか、実験方法が適切かなどを検討して指導案にし、さらに検討します。発問の仕方や児童の反応、安全などについてもしっかり考えます。
一人で考えることも必要ですが、授業設計をするときには、仲間の存在が欠かせません。アドバイスをもらっているうちに、新しいアイディアが浮かんできたり、よりよい発問の仕方に気付けたりするからです。理科教師塾には、自由に意見を言い合える空気があります。先輩にアドバイスをもらうのはもちろんですが、後輩が先輩にアドバイスすることもあります。理科教師塾メンバーは、児童が面白い、不思議だとが思える授業をつくることを目指しています。
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模擬授業
学生が児童役になって模擬授業を行います。初めは語彙の少なさに落ち込み、頭の中が真っ白になって自分でも何を喋っているのか分からなくなることもあります。しっかり準備をしてきたはずなのに、声の大きさ、板書の仕方、声の掛け方、何もかも上手くいきません。でも、失敗を重ね、繰り返しチャレンジして一つずつ積み上げて実践力を高める、そうすれば理科に強い教師になることができます。
理科教師塾には、同じ志をもつ仲間がいます。本物の教師力を身に付けられる環境があります。理科に強い教師を目指して、理科好きな子どもたちを増やしてほしいと考えています。
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実践とICTのベストミックス
GIGAスクール構想で児童一人1台のタブレット端末の活用が始まり、また、新学習指導要領では、6年生の「電気の利用」の単元で「プログラミング的思考」を育むことが求められています。実験や観察などの実践を大切にしながら、理科の授業で効果的なICTの使い方、プログラミング的思考を育む授業の進め方などを研究しています。
GIGAスクール構想/児童一人1台端末への対応
児童一人1台の端末の活用が始まったことへの対応として、理科教師塾ではAppleTVを活用しています。学生の使用しているiPhoneや理科室のipadで顕微鏡写真を撮影し、ミラーリングして全体で共有。撮影したばかりの写真で学びを深めることができます。意見を発表する際にも気軽に使えるツール。学生と共に様々な場面で活用できるよう研究したいと考えています。
デジタル教科書
児童1人1台の端末環境が現実となった今、教師を目指す者としてICTを活用した指導力が不可欠です。理科の目標である「実感を伴う理解」を実現するためにはデジタル教科書をどのような場面でどう使えば効果的かを考え、指導者用のデジタル教科書を使いながら模擬授業を行っています。
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プログラミング教育
新しい指導内容として追加されたプログラミング教育。理科教師塾では、様々なタイプのロボットを使いながら指導法を研究しています。
小学校理科では、6年生「電気の利用」の単元で電気の働きを制御したり、電気を効率よく利用したりする工夫をプログラミングを通して確かめます。このとき、「プログラミング的思考」を育むことが求められています。始まったばかりの新しい指導内容のため、試行錯誤を重ねては新たな課題が見つかるという繰り返しです。さあ始めよう、と12台のタブレットPCやプログラミング用タグを並べてみると充電不足だったり、ペアリングが切れていたりと、デジタルならではの問題が見つかります。しかし、そういったことに対応する経験こそが本当に必要な力であり、「理科に強い教師になる!」という目標への近道です。
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その他の活動
飼育・栽培
理科教師塾では、淡水魚、ゾウリムシ、蚕、ワタ、ホウセンカなど多くの動植物の飼育栽培しています。
小学校の多くは動植物の飼育活動が行われています。生き物に触れ合うことは、命の大切やはかなさを知り、生き物を愛らしいと思う心を育てることができます。でも動植物の飼育は、説明書通りにいくことは少なく、経験が物を言います。教師になったとき、飼育や栽培ができる先生として頼れる存在になってほしいと考えています。
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発刊
理科教師塾では、小学生(5~6年生生を想定)に使ってもらうため「岡山県に住む淡水魚と私たちのくらしを考える観察ノート」を制作しています。現在は第四版となり、毎年のようにバージョンアップを行っています。また2020年度には、「わくわくサイエンスTOYS」として幼児や小学校1~2年生が楽しめるサイエンスおもちゃの作り方と遊び方をまとめた冊子を発刊しました。
不特定の子ども達が活用するものを作ること自体が学生にとって初めての経験です。ねらいを明確に発達段階を意識して制作することの難しさを感じながら、取り組むことは着実に実践力が身に付きます・
学外の活動
理科教師塾は、学内で学んだことを子どもたちの前で試し、子ども達の反応を体感することで本物の指導力が身に付くと考えています。そこで、小学校へ出向いて子どもたちと関わりながら理科を学ぶ「理科インターンシップ」、募集型のサイエンス教室「わくわくサイエンス」、川に入って河川の環境を学ぶ「淡水魚に親しみ河川の環境を考える活動」などを行っています。
「理科インターンシップ」以外は、企画、準備、実践は、すべて学生主体で行います。
子ども達の笑顔は何にも代えがたく、教師になりたい気持ちも高まります。しかし、発達段階に応じた声掛けができなかったり、曖昧な説明で子どもの集中力がきれてしまったりなどを経験することもあります。でも、自分に不足している力を自覚し、新たな学びへつなげることができます。それこそが実践力です。
それぞれの活動の詳細は、以下のバナーからご覧ください。